★労災保険 精神障害の認定基準が改定されました。
心理的負荷による精神障害の労災請求事案については、今まで「心理的負荷による精神障害の業務上外に係る判断指針」に基づいて判断が行われてきましたが、平成23年12月26日に、具体的な判断事例などがより細かく記載された新しい「認定基準」に関する通達が出ました。 今後は改定された「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づいて、精神障害の業務上外の判断が行われることになります。 「心理的負荷による精神障害の認定基準」(新) ◯基本的な認定要件 次のいずれの要件も満たす対象疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。 1.対象疾病を発病していること 2.対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷(特別な出来事など)が認められること 3.業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと また、要件を満たす対象疾病に併発した疾病については、対象疾病に付随する疾病として認められるか否かを個別に判断し、これが認められる場合には当該対象疾病と一体のものとして、業務上の疾病として取り扱う。 とされています。 以上の基本的な認定要件については、今までの判断指針と大きな変更はありません。 ◯主な改定ポイント 改定されたポイントで注目したいところは、具体的な認定審査の取り扱いのうち、以下の内容です。 ①「特別な出来事」における長時間労働の評価 発病前おおむね6か月の間に「特別な出来事(業務による強い心理的負荷)」に該当する出来事が認められた場合は、心理的負荷の総合評価が「強」と判断されますが、発病前から起算した直前の1か月間におおむね160時間を超える時間外労働(極度の長時間労働)を行った場合等は、その事実のみで心理的負荷の総合評価が「強」とされることになりました。 ※従前は極度の長時間労働に関する具体的な時間数までは明示されていませんでした。 ②心理的負荷評価表に具体例が記載 従前は、心理的負荷の度合いを判断する評価表には対象疾病の発病に関与したと考えられる業務上の出来事の具体例の記載はありませんでしたが、改正により「強」「中」「弱」の区分ごとに該当する業務上の出来事の具体例が記載されました。 ③出来事の評価期間の取り扱い 従前は、例外なく発病前おおむね6か月以内の出来事のみで評価が行われましたが、いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、発病の6か月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にその行為が継続して行われているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とすることとされました。 ④既発の精神障害が悪化した場合の取り扱い 従前は、既に業務外の出来事により精神障害が発病していた場合には、その後に起こった業務上の出来事により障害が悪化したときであっても労災保険の対象とはされませんでしたが、改正により、既発の精神障害であっても、特に強い業務上の心理的負荷(特別な出来事)により悪化したと医学的に認められる場合には、悪化した部分について業務上の疾病として取り扱うこととされました。 近年は特に精神障害に関する労災認定の請求事案が増加しており、その分、個別の案件ごとに認定が決定されるまでかなりの期間を要する状況となっていましたが、今回の改定により認定基準が具体化されましたので、審査の迅速化や効率化が行われることが期待されます。 ◯参考URL(厚生労働省報道発表資料) http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html 世田谷の社会保険労務士 能登伸一事務所 |
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